岩手県のJR釜石線を走る「SL銀河」が引退しました。
正午が近づくと窓を開ける習慣が身に付いておりまして、今日も開けました。SL銀河の時を報せる汽笛を聴くために。(盛岡駅の検修庫の中で、正午と17時に汽笛を鳴らしていたのです)
しかしながら・・・
3秒前、2秒前、1秒前
「シーーーーーーン」
この脱力感よっ!!
機関車は暫く検修庫に、客車は秋田に移送され解体とのこと。この「解体」の二文字が胸に突き刺さりました。レンガ色の日本史の教科書に記された「解体新書」の文字を眼にした時に、同じ感情が湧き上がったことを思い出す。何やらおぞましさを感じる言葉。
そこで気付いたのです。ワタシの中でSL銀河が擬人化されていたことを。いつしか「銀河さん」と呼んでいたもの。ひょっとしたら、いや、完全に恋していたのね♡
期間運行のラストランの時、近くの子どもが父親に「銀河さん終わっちちゃうの?」ときいていました。その横には白杖をついた目の不自由な方がいらして、固く目を閉じて小刻みに身体を震わせていた姿が忘れられません。SL銀河の汽笛、振動、煙の匂いを全身で感じようとしていたのでしょう。
もうね、大人も子どもも男も女もなく、ホームにいる人も、車内の人も機関士さんも駅員さんも、み〜んな心ひとつになってんの!
こんな感覚は今後ワタシが生きている間に味わえないんじゃないか?とすら思うのです。
実は、気仙沼からの帰りに検修庫へ向かいました。6月19日の17時が最後の時報になると聞いていたから。
すると、やはり名残を惜しむ銀河さんのファンが集まっていました。
検修庫のシャッターが開いていて、銀河さんのお顔が見える。
3秒前、2秒前、1秒前
みんなカメラを構えて固唾を飲んでいます。
「ポーーーーーーーッ」
北国の初夏の青空に響き渡った後、時報を鳴らす係が挨拶に出てくることもなく、静かに静かに黒いシャッターが降りる。それを、眺めながら泣きました。
シャッターが降りた後の転車台は、役者が去った後のステージさながら。9年と2ヶ月というロングラン公演は静かに幕を閉じたのです。
還暦近いオッサンを夢中にさせてくれた銀河さん、ありがとう!!